100分de名著 ル・ボン『群衆心理』 2021年9月
本屋での立ち読みで、100分de名著のテキストのル・ボン『群衆心理』が目に入る。少し読みすすめると、今の時代ならではテキストで、素早く内容を知りたかったので、『群衆心理』ではなくテキストのみを購入。
100分de名著という番組は、名著の入り口には最高だが、結局は読まずに終わってしまう。名著を手に取らずに、テキストで満足してしまう禁断の果実のような解説書。
群集心理を利用する政治家として、ヒトラー、トランプなどを挙げ、最近の日本の政治情勢も取り上げている。群集心理を現代に合わせて上手に操っている代表がトランプなのだろう。この点では日本の政治家は全然及んでいない。
テキストではなくテレビ番組をみると、タレントの伊集院光さんは、群集心理のことが手に取るように理解できているようだ。テレビで活躍するタレントにとっては、視聴者は群衆で、これまでにも様々な試行錯誤を繰り返してきたのだろう。そういえば、トランプもテレビで活躍していた。
群衆を説得するには断言と反復と感染の三つを挙げている。断言はよく分かるし、反復もマーケティングの常套手段である。感染というキーワードは怖い。断言と反復をしていくと、感染力も持つという。
淋しき越山会の女王(児玉隆也)
立花隆さんがお亡くなりになった記事のなかで「淋しき越山会の女王(児玉隆也)」を目にした。著者(児玉隆也)を存じ上げずに興味がてらに、Amazon、Honto、E-honで検索すると、中古本以外しか販売しておらず、しかも値上がりしている。さらに興味が増し、図書館で予約。先約も多く、1ヶ月以上待った上で拝読した。
七編で構成された文庫本だが、読んだのはタイトルにもなっている「淋しき越山会の女王」だけ。田中角栄の金庫番で愛人であった佐藤昭子(旧名:佐藤昭)のルポ。
当時の金銭感覚、世俗や風俗がよく分かり、自民党の根底にある土着性についても、アメーバ、核、核の培養菌としての金といったキーワードを使ってわかりやすく説明している。
発表が昭和49年11月号の文藝春秋ということは、まだ50年も経っていない時期の発表であることが信じがたい。戦前と戦後ほどではないにしろ、この数十年で社会の常識が相当に移り変わっていることを改めて実感した。
このなかで、田中角栄を「宮本顕治にも松下幸之助にも池田大作にもなり得た人物」との表記があった。恥ずかしながら、宮本顕治を全然知らずに、すぐに検索。私の不勉強は置いておき、今後も田中角栄は、歴史上の人物として語り継がれるだろう。他方で、松下幸之助と池田大作は、パナソニックや創価学会(公明党)が社会のなかで存在感を失ったときは、忘れ去られてしまうかもしれない。